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恋愛を成功させる殺し文句

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殺し文句は、ミステリアスの味があってこそ効果がある。『キーラーゴ』という映画でハンフリー・ボガートが演じたタフガイは、ローレン・バコール演ずる雌約のような女の顔をじっと見つめて言う。「君の鼻溝は、すごく深いね。俺は、子供のころ、父親にこんな話を聞かされたことがある。

鼻溝の深い人間は、生まれたとき、天使の秘密を見てしまった。それで天使がその秘密を封印するために唇の上に人差し指を置いた。深い鼻溝は、天使の指の跡なんだってね」。とのけぞるほどのキザなセリフである。だが、キザになることを恥ずかしがっているようでは、一撃必殺の殺し文句は吐けない。

殺し文句というのは、非日常的でなくてはならない。では、非日常的な殺し文句とは、いかなるものなのか?映画『チャイナタウン』のヒーローである探偵ギテスは、恋に落ちかかった女性依頼者の目を見つめて、こう言う。「目の奥に、緑の点がある。まるで心の船がそこに映っているようだ」。

君って、不思議だね

その女に心の疵があることを見抜いてのセリフなのだが、それまでギテスとのあいだに一線を引いていた女は、そのひと言で陥落してしまう。この言葉、平たく言えば、「なんか、悩みがあるみたいだね。僕に話してごらん」ということだ。だが、それではお話にならない。

昔、「君と朝のコーヒーが飲みたい」という殺し文句が流行った。だが、それが「君の味噌汁が飲みたい」に発展することによって、元の言葉が持っている味わいまでもが台無しになってしまった。日常の時間と空間からはずれたミステリアスなスポットを、瞬間的に生み出すものでなければならない。その意味で、「君と朝のコーヒーが飲みたい」も、日常性に流れやすい要素を多分にふくんでいたきらいがある。

ハードボイルド野郎が吐くようなセリフが、そう簡単に思いつくものではないことも確かだ。そこで、最も簡便な、とっておきの殺し文句を紹介しておこう。それは、「君って、不思議だね」である。前出のハードボイルド野郎のセリフは、どちらも女性のミステリー味を突いたものだ。つまり、殺し文句は、女の持つミステリー味そのものに言及すると、より効果を発揮するのである。

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