脱退一時金の繰下げの規定は、加入者期間に係る期間通算の規定と対となって、出向等の際における企業の実態に応じた柔軟な対応を可能とするものとなっているといえるだろう。脱退一時金の支給を繰り下げている者が、もとの確定給付企業年金に再加入して、前後の加入者期間を合算されたときには、脱退一時金の受給権はいったん消滅し、次に受け取る老齢給付金や脱退一時金につながっていくこととなる(令第27条第2項第3号)。
脱退一時金の繰下げをしている者が老齢給付金の支給開始年齢に達したときは、老齢給付金の受給権者となり、脱退一時金の受給権は消滅する(令第27条第2項第2号)。支給開始年齢に達しさえすれば老齢給付金の支給要件を満たすこととなる者には、すべて、老齢給付金を受給する途が開かれていなければならない(脱退一時金を支給することで老齢給付金を支給しないというようなことがあってはならない)。
確定給付企業年金は、老齢給付金の支給開始要件以外の要件を満たして脱退した者には老齢給付金の全部または一部に代えて脱退一時金を支給することとする(言い換えれば、老齢給付金の全部または一部を受給することができない)といった旨を規約で定めることはできない。
任意的給付
米国の企業年金においては、遺族年金を設けることが基本となっている。経済がグローバル化し、日本の企業が他国で活躍することも、他国の企業が日本で活躍することも、また、そうしたグローバルななかでサラリーマンが働くことも珍しいことではなくなってきた。
その財源がきちんと積み立てられていることが前提であろうが、制度の目的に関連する任意的給付として、企業の労使の選択により、遺族に対する年金たる給付とか障害給付金を行うことを認めてもよいのではないかという考え方が、従来からあった(たとえば、厚生年金基金制度研究会の報告書く1996(平成8)年、厚生省(当時)年金局》)。
従来、わが国の企業年金においては、老齢給付金と脱退一時金以外の給付としては、基本的には、死亡一時金が認められているのみであった(給付の名称は制度によって様々)。しかし、老齢給付金に対して過大なものでない(主たる目的から垂離せず)。